今のままでは、進展は期待できそうにない。やっぱり、何か対策を考えないといけないな・・・・・

その時にふと閃いた。

「そうだ!女性から告白されると男は弱いもんだよな!」
思わず、言葉に出してしまうほどの会心の解決策だと思ったのだ。

歩多繁の性別概念を女性のものと交換しても、発展はないと感じていたのだが、自分が女性概念と交換して女として、歩多繁に女性の俺が告白して恋人同士になったところで、フタバと俺の性別概念を再交換すればよいではないかと考えた。

俺と交換する相手は、誰にしようかと考えると、やはり、元双葉さんの清日子さんしかいない。
こうなったら、いてもたってもおられず、異性の性別概念の等価交換儀式の準備に取り掛かった。

決行日は、今週の金曜日の夜に設定し、2日しか猶予はないが、もう慣れたもので、清日子さんの髪の毛も簡単に入手して、全ての準備を整えてしまった。

今週の土日に、また親元に用事が出来たと言ってふれまわり、自宅に連絡や来ないように対策もおこたらなかった。
決行日の夜になり誰も邪魔が入らないように遮光カーテンを念入りに確認し携帯電話の電源をオフにした。
もう慣れたもので、儀式に必要な幾何学的な模様文字と呪文の楽譜はパソコンで印刷し、midi再生して最後の呪文朗読の最終チェックをした。

・・・・

俺と清日子さんの性別概念の等価交換儀式を開始した。念を込めての呪文も間違いなく言えた。長い時間しばらく待っていると急に幾何学模様の文字が紙から外れて空中に浮遊し眩い閃光を放って消えた。
またもや動く事さえ困難な状態で、息も絶え絶えの状態になり、その場に倒れ込むように気絶するかのように眠ってしまった。

・・・・

今度は、翌日の昼遅くに目が覚めた。だんだんと意識の無くなる期間が短くなっているようだ。やはり、全身筋肉痛のような苦しみが襲ったが翌日の日曜日の夜には痛みが、かなり軽減したいた。

翌朝、学校に行って、あまりの環境の変化にビックリした。

いきなり女の子に呼び止められて
「どうしたの、化粧もしないでスッピンだし、頭はボサボサだし・・・そんなに急いでたの? とりあえず、お手洗いに行きましょう」
と言って、強引に女子トイレに、引っ張られた。
「あなたならスッピンでも綺麗だけど、髪の毛ぐらい整えないと・・・」
そう言いながら、鏡に向かいながら、髪に櫛を入れて整え始めた。
「それより、何っ!この服装! 男物のシャツにメンズのジーンズパンツなんて穿いて、朝まで男の家に居たの?」
「男の家に居る訳ないじゃん」
俺は、とっさに答えながら、服装や日用品の事も考えていた。

~どうしよう。女物の服なんてもって無いよ~。近所のショッピングモールに行って早いところ買い揃えないといけない。大丈夫かなぁ~

「とりあえず、口紅だけでもつけようよ。ほら、出して!」
「えっ?」
いきなり、自分のデイパックをひったくり、中を開けてゴソゴソと探し始めた。
「化粧ポーチもちゃんと持って来てるじゃない。」
入れた覚えのない化粧ポーチから、口紅とポケットティッシュを取り出し、差し出されたので、母親が化粧しているのを思い出しながら、紅をつけて、余ったのをティッシュで軽くふき取った。
「トシアキは、綺麗な女の子なんだから、だらしがないと、男が逃げ出しちゃうぞ。じゃあ先に講義室に行ってるから」
そう言って、その女の子は、出て行った。大きなタメ息をついた。

~この化粧ポーチは、どうしたんだろ~

デイパックを覗きこむと、きれいに整理されており、ノートを見ると丸っこい女の子ような文字で書かれていた。
トシアキと呼ばれていたので、ふと気になり学生証を見てみると、名前が、俊明から、俊亜季になっていた。

講義室に戻ると、また、あの女の子が手を振っているので、仕方なく、そこに行った。

~でも、どうしよう。あの女の子の名前を知らないんだよね。まあ、なんとかなるだろ~

「あれ?いつ着替えたの?」
そう言われて、下を見ると、いつの間にかシックなワンピースを着ており、足には、いつの間にかストッキングを履いている感覚がしている。
その先を見ると、いつもの履き崩したスニーカーから、よく女の子が履いてるような可愛いデザインのパンプスに変わっていた。
頭にも違和感を感じて、触ってみると、いつも清日子が付けていたカチューシャがあった。何が何だか分からないが、ここは適当に答えて置く事にした。
「うん、着替え持って来てたんだけど、階段の踊り場に置き忘れてて、さっき、着替えたの。さっきは、寝ぼけちゃってたみたいで、ごめんなさい」
「そうなんだ。これだと、いつもの俊亜季だね」
そう言って彼女は笑っていた。

~やっぱり、皆には、俺が元双葉さん級の美女に見えているんだなあ~

「あっ!俊亜季の彼氏が来たみたよ。いつもの指定席に行った行った!」
と身体を押されて、その方向を見た。歩多繁(フタバ)が、ニコニコしながら、俺を見ているじゃないか。
何を言っていいか分からないまま、フタバの隣に座った。
「俊亜季、どうしたの? 今日は、しおらしく、おとなしいじゃん。何かあったの?」
「何も無いよ」
俺は何を答えていいか分からないまま、ごまかすかのように咄嗟に答えていた。

~いつの間にか、皆、公認の恋人同士になっているようだ。そいえば、いつもフタバと一緒に居たからかなぁ~
俺は、あれこれと考えていた。

携帯電話のメール着信音がしたので、携帯電話を探して見るといつの間にか女の子が持つようなピンク色の可愛いデザインの物に変わっていた。
見てみると、名前の知らない女の子からのメールが沢山来ていた。たぶん今の俺の友達ということなっているのだろうと思うと内心あせった。
もしかしたら電話帳も変わってるかと思い見てみると沢山の女の子の名前が並んでいてパニックなりそうになったが、誰か一人の名前を選択してみると顔写真付きで入っており、これを覚えれば不審がられずに済むと思い助かったと安堵した。
俺と性別概念を入れ替えた清日子さんというか元清彦の事が気になったので名前を見ると清日子は存在せず清彦のみがあったのでこれがそうだろうと確信した。
確か、同じ講義を受講しているはずなので、本人も確認しようと周りを探してみたが見当たらない。

「俊亜季(トシアキ)、どうした。誰か探してるの?」
俺が挙動不審に周りを見ていたものだから、歩多繁(フタバ)が聞いてきた。
「キヨヒコさんが見当たらないなと思って・・・」
「ハーレムの清彦のことか。あいつなら、今朝がた何かパニクった感じで自主休講するって俺に代返依頼してきたよww」
「ハーレム?」
「俊亜季、知らないのか? 金魚のフンみたいに、いつも周りに女が寄り添って来てモテモテのプレイボーイだから、そう言われてんだよ」
「知らなかった・・・」
たぶん、清日子の女友達だと対象が男性なんで友達という訳ににいかないから、そういう形で修正されたんだな。

「清彦のやつ体調でも崩したかなあ」
そう歩多繁がつぶやいていると、周りにいた女の子が聞きつけて
「え~っ!、清彦君が体調崩して休みって本当!」
いつの間にやら、どこから湧いたのか何人かの女の子が数名程集まってきた。

「私達も自主休講して、清彦君の所へ行きましょうよ」
その女の子集団は、ワイワイと騒ぎながら場所を移動して気の弱そうな真面目そうな女の子に言いよっていた。たぶん代返依頼してるんだと思う。

「清彦も大変だねぇ。俺ももてたいけど限度があるよww。まあ、俺にはトシアキがいるからいいけどね」
恥ずかしげもなく、そんな事を言って、多繁は笑っていた。
俺は、はずかしくなり顔が熱くなって机の端を見つめた。たぶん真っ赤になってるんだろうな。
「トシアキ、帰りに俺ん家でエッチでもするかねww冗談冗談、帰りに清彦の家に行ってみるか?」
「えっ?・・・・両方がいい・・・あっ 清彦さんの所に行きましょ」
思わず、小さい声だが本音が出てしまった。
その、両方がいいという言葉を歩多繁は、聞き逃さなかったようだ。
「俺ん家に来てもいいのか? いつもだったら断ってるのに、気が変わらないうちに、じゃあ清彦の家経由で俺の家に行こうな!約束だぞ」
「うん」
有無を言わせず承諾させられたような感じだった。

講義中にノートをとりつつ、時々隠れながら携帯電話の電話帳を眺めながら必死で名前と顔を一致させていた。
電話帳の女の子は、たぶん、元双葉さんの友達なんだろうと思う。
女の子同士として、つきあっていけるか心配だった。

電話帳で写真と照合して、お手洗いに強引につれていった女の子は、若葉さんというらしかった。

メールも確認してみると、女の子特有の絵文字だらけで意味不明な感じだった。
よく観察して解読してみると、内容的には他愛のない事で日常会話の延長な感じと受け取った。
女の子なら、すぐ返事しないといけないよなと、思ってメールを打ってみると絵文字が変換候補に次々と出てくるので、適当に交ぜて一行程度のシンプルな感じで次々と返事を書いていった。

(トシアキは気づいてないがメールの打つ速度が非常に速く打ち慣れてるように片手で打っていた。)

俺は、女の子になると、身だしなみやこんな事も気にしないといけないなんて、大変なんだと不安になった。


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