歩多繁に電話して見ようかと、携帯電話が置いてある机の方を見たら、若葉から貰った避妊具の箱が見えた。
何だか、急に気になりだしたので、手に取ってみた。

ずっしりと重い白い箱を開けると若葉の言っていたペッサリーリングが十数個とジェルが封入されたスポイド多数入っており、2個金属器具は脱着用の器具だろう。

説明書を見ると、英語でよく分かりにくかったが、詳細な写真と絵で使用方法が書かれていた。

「へぇ~このリングが子宮口を塞ぐんだ。ふ~ん~」
女体の神秘だと感心しながら見ていると、手に持っている袋が急にぼやけてきた。
あれっと思ってると、いつの間にか、それがコンドームに変化していた。

身体が男である俺が使用できるように、修正が行われたのだと思った。

そうか、俺が若葉の持ってきた女性用避妊具を使っていると称して堂々と使って歩多繁とエッチ出来るじゃないか・・・

何だか少し嬉しくなってきた。
よし、歩多繁(フタバ)の声も聞きたいし、電話して見よっと!

「もしもし、俊亜季です。歩多繁さんですか?」
「あぁ、俺だよ。こんな時間にどうした」
「うん、若葉が帰っちゃったんで、寂しくて・・・」
「何だ、そうか。 何かあったのかと思って、身構えてたよ」
「あのね・・・今じゃ無くていいから・・・いつでもいいの・・・あたしの家に来ないかなと思って・・・」
「そんなに寂しいのか?」
「う~うん、そうじゃないの。あのね・・・そのね・・・えっとね・・・う~~」
「そうか、わかったよ。俺の肌のぬくもり、恋しくなったんだなww」
歩多繁は、明るく小さく笑っていた。
「うん、お願い・・・ダメだったら、あたしが歩多繁の家に行くからさぁ・・・いいでしょ~・・・」
「そう言えば、俺の母親と面識なかったよな。いい機会だから、今週の土曜日の昼頃にでも来いよ。」
「うん、わかった。ありがとう、約束だよ。ただね、その・・・あのね・・・あ・・・」
「そうか、やっぱり、エッチしたいんだなww。わかったよ。俺が、何とかお膳立てしてやるよw」
「ありがとう」

話はちょっと変わったが、歩多繁のお母さんにも会えるし、いいよね。

・・・・・

翌日の金曜日になり、朝からテンションの高い俊亜季がいた。
「俊亜季、どうしたの?何かいい事があったの?」
「若葉が、あたしの家から、居なくなった事が嬉しくてwww」
「え~、何?私が居ない方がいいの~悲しいなぁ」
「冗談よ。信用しないでよ! 本当はね。歩多繁の家によばれたの~。それでね、いつも仕事で居ない、お母様に会わせてくれるんだぁ」
「ちょっと~、何よ! 少し、本気にしたじゃない。歩多繁さんのお母さんて、いつも居ないの?」
「うん、母子家庭だから普通より多く稼がないといけないらしくて、いつも出張で居ないか、夜遅くならないと帰ってらっしゃらないの」
「裁縫が得意で、歩多繁の服をよく作ってるじゃない。よく、時間あるね」
「寝る間も惜しんでやってるみたい。母子家庭で一人っ子だから、着るものに不自由させないのと、親子のコミュニケーションを保つ為だって」
この話は、元の清彦の時の話であるが、たぶん今も間違いないと思う。
「へぇ~、凄いお母さんなんだ。昼から歩多繁さんと一緒の講義になるから、それも嬉しくて堪らないんでしょww」
「えへへ、でもね。昼休みを挟むから、昼食でも一緒になるからねww」
「いいなぁ、私も彼と一緒にいたいなぁ」
「今は、誠さんのアパートで一緒じゃないのぉ」
「えへへw・・・」

俺は、時間が経つにつれて、嬉しさの頂点を通り越して緊張してきた。
何もかもが、うわの空で、歩多繁(フタバ)と一緒にいるのにも関わらず、明日の事が気になっていた。

その日の晩も目が冴えてしまって、眠れないので、明日の朝に手土産を買っていく予定でいたのだが、お母様にいいところを見せようと、手作りでケーキを焼き始めてしまったのだ。

あれこれしている内に朝の4時になってしまい、なんとか、ベッドに潜り込み1時間程寝むれたが、中途半端に寝たので眠くてしかたない。
強制的に目を覚まさせる為にシャワーを浴び、化粧や身支度を念入りにして、少し早いが、10時過ぎに歩多繁の家に出かけた。

俺は、歩多繁の家の前で、うろうろと何度も行ったり来たりして、近所のおばさんの視線が気になりだしたので、仕方なく意を決して、玄関の呼び鈴を押した。

少し待ってると玄関のドアが開き、歩多繁が出て来た。
「よぉ、俊亜季、早かったな。まあ、上がってくれ。母さんも待ってるから」
そう言ってきたが、俺は緊張して声に出せず無言のままで、歩多繁はリビングに案内してくれた。そこには、元清彦の時から、忙しくて会った事のない、歩多繁のお母様が、座っていた。
「いらっしゃい」
「こ・こ・・こここ・・・こんにちは、ト・ト・俊亜季と申します。よろしく、お願いします」
「歩多繁から、聞いてるわ。こちらこそ、よろしくね。そんなに緊張しなくていいから・・・」
とお母様は、笑っていた。
「つまらないものですが、どうぞ」
と俺が作ったショートケーキ風に切りそろえて入れた紙箱を差し出した。
「まあ、美味しそうね。これは俊亜季さんの手作りなのね。よく出来てるわね。」
紙箱を左右に開き、にこやかに言ってきてくれた。
「ありがとうございます。」
「こっちが、お礼を言うものよ。こちらこそ、ありがとう。お昼前だけど、早速いただきましょうかね。紅茶でも用意してくるわ」
そう言って、お母様は、キッチンに行ってしまわれた。

お母様の後を少し長い時間、うっとりと眺めて自分の世界に入っていた。
「大変綺麗な、お母様ね。ステキだわ」
俺は、本心から、そう思ったので、そう言った。
「お母様というのは、やめてくれないか。なんかこそばゆいよ。」
「じゃあ、何て、お呼びすれば、いいかしら」
「そうだな、母さんに聞いてみろよ。それと、いつもと言葉使いが違うなww いつもらしくしろよww」
「いやだわ。いつもと変わらない言葉使いざますわよ。失礼な人ねぇ」
自分でも、多少気がついてはいたので、大袈裟に言ってみた。ついでに、オホホホって笑おうかと思ったが止めた。
「やっぱり、お母様に直接聞かないとダメかな?」
「また、お母様って言ってるよww」

そこへ、お母様が、戻ってきた。

「お待たせして、すみませんね」
グラスのティーポットに紅茶を入れて、ティーカップセットとケーキを皿に小分けして持ってきた。

「ありがとうございます」
「先程、聞こえましたよ。お母様というのは、よしてね。おばさんか、私の名前の清美にして下さるかしら」
「それでは、清美様で、よろしいでしょうか?」
「様付けは、よしてよねww」
「すみません。清美さん・・・」
なんだか、言葉が消え入りそうそうになった。

「それで、いいわよ。私も貴方の事、名前で呼ばさせてもらうわ。俊亜季さん」

「先に俊亜季さんに、謝らないといけなかったわね。ごめんなさいね。 貴方が、うちの息子に、お昼の食事を用意して下さってるんですってね。今日までの分だけど、これで足りるかしら・・」
そう言って、清美さんは、俺に1万円札を手渡してきた。

「そんな、受け取れません。歩多繁(フタバ)さんには、お金以外のもので充分に貰ってます。それに、お弁当も、まだ初めたばかりの数日だし、1個作るのも4個作るのも殆ど変わりませんから・・・」
「優しいのね。別にいいのよ。このお金は、息子の小遣いから、月々差し引いておくから、心配ないから、受けとってね」
「えぇ~~~! 俺の小遣いから取るのかよ。勘弁してくれよ。母さん」
「歩多繁、不定期だけどアルバイトもしてるでしょ! それくらい、いいじゃない。これからも作って貰うんだったら、歩多繁の小遣いから捻出しなさいね。じゃあ、今回の分は、月々千円の分割にしてあげるから、いいでしょ!」
「すいません。それだった、あたし、なおさら受け取れません。料理は趣味でやってるし、作ってると楽しいんです。今後については、材料費をもっと落として安価で仕上げますから、あたしの趣味を取り上げないで下さい」
俺は、もちろん、料理の趣味は、ないが、ここ最近になって、それが当たり前の習慣と感じ始めて、作っていると何だか楽しいのは、本当の事なのだ。

「それじゃあ、材料費だけでも、歩多繁、払ってあげなさい」
「それでも、受け取れません。歩多繁さんが好きでやってる事で対価を求める事は考えていません。あたしは、歩多繁さんが一緒に居てもらえば、それだけで充分なんです」

何度も、やり取りをして、結局、1回の材料費を150円位に抑えることで、その150円を毎回貰う事にし、一万円も受け取らない事で決着した。

俺は、材料の調達先とレシピの工夫をすれば、何とかできると考えていた。

しかし、料理もあまり知らない筈の自分に、こんな事を考えているにも関わらず全く違和感を感じていないばかりか、当たり前と感じていた。

「もう、お昼ね、俊亜季さん、昼食を食べってね。結局、何だか話ばかりで、俊亜季さんのお美味しいケーキを食べる事にならなかったわね。冷蔵庫にしまっておきますね。」
「あたしも、食事の支度を手伝わさせて下さい」
そう言って、結局、誰もが紅茶しか飲んでないティーカップと手をつけてないケーキの片づけを手伝おうとしたら
「いいのよ。それにお昼の食事の用意は終わってるから・・・。あなたは、お客さんなんだから、ゆっくりしていってね。」
清美さんは、紅茶とケーキを片づけてキッチンに行った。

俺は時間を考えればよかったと後悔した。お昼頃に来てという言葉に食事時間と重なる事をすっかり忘れていたのた。

「ごめんね。歩多繁(フタバ)、お昼時間に押しかけちゃって」
「俺が、その時間に設定したんだから、気にするなよ。それに、夕方から母さんは出張で居ないんだよ。」
「えっ!、貴重なお休みに、押しかけちゃったのね、ごめん。後で清美さんにも謝らないと・・・」
「気にするな。母さんは、あれで楽しいんだから」
「話は変わるけど、清美さんていう名前なんですね。名前で呼んでよかったかしら」
「母さんが、そう言ったんだからいいんだよ。それに親しい人にしかそう呼ばせないし、俺達の事も認めてくれてるんだよ。」
「うれしい。じゃあ公認なんだ」
「俊亜季の両親に会って許しを貰わないといけないな」
「たぶん、それは大丈夫よ。いつも、どんな人でもいいから誰かいい人は、いないのかって言われ続けているもん。今度前もって話しておくね。」
「よかった。ありがとう。反対されたらどうしようかと思って心配したよ」
「うちの両親に怒られている歩多繁も見たいな」
「よ・・よしてくれよ・・・」

緊張をしながらの食事も終わり、清美さんに反対されながらも強引に片づけを手伝った。
「すいません。貴重な休みの日に、押しかけまして・・・」
「いいのよ。息子の彼女に会えると思ったら、楽しくて嬉しいわ。」
「あら、あなた。ブラを着けてないの?」
密着するかのように片づけしてるから、ばれてしまったらしい。
「はい、筋肉質で揺れないし、煩わしいので着けてないんです。」
「それは、良くないわ。スタイルがいいのに、放っておくと重力に負けて崩れるわよ。ちゃんとサイズの合ったの着けないといけないのよ。後でサイズを教えて、私が下着を作ってあげる」
「このままで、いいです。清美さんに迷惑をお掛けするなんて出来ません。それに、いつも着けてないから、サイズ知らないし・・・」
「そうだ。今から採寸しましょう」
清美さんは、片づけも終わったので強引に引っ張っていった。

部屋に入ると、たぶん用途の違うと思われる数台のミシンが置いてあり、プロの仕事場のようだった。
「ここは、私の趣味の部屋なの」
「これは?」
何着か作りかけの服や、出来あがった服が、ハンガーにかけられている中で、タンクトップの男物のシャツが置いてあったので気になり聞いてみた。
「あぁ、それは、俺のだよ。いつも、着てるだろう」
いつの間にか、歩多繁(フタバ)が、後ろに居て、ワイシャツの前を開き、自分の着けているブラジャーを見せた。
等価交換儀式の歪で、歩多繁が身に着けたから、形が変化したものだと理解した。
「乙女の前で、はしたない。これから、乙女の秘密を測るんだから、出てってちょうだい!」
清美さんは、歩多繁を追い出した。
「気が付かない息子で、ごめんなさいね」
「いえ、そんな事ないです」
「あれ?・・・・・・あれ?・・・・・・・」
清美さんが、メジャーを持って採寸していると何度も、小さい声で、首を傾けながら、メモっていた。
「どうしたんですか?」
俺は聞いている最中に、しまったと思った。もしかして、今の男の身体の寸法がそのまま、採寸されているのではと、恐怖した。
「ちょっと、最近、目が悪くなったのかしら。メジャーの数字がぼやけて見辛くてね。もう年なのかしら。でも、あなたのスタイルは、見た目通りいいのね」
清美さんは、メモった数字を見ながら言ったので、俺は、男の身体の寸法でなくてよかったと安心した。
「そんな事ないですよ。清美さんは若々しいし、スタイルだっていいし、多分、疲れてるだけですよ」
ちょっと強引に疲れのせいにした。
「若々しくてスタイルいいだなんて・・・そんな事無いわよ。でも、あなたのサイズは羨ましいわ。トップ91アンダー68のFカップ、ウェスト56のヒップ86だなんて、すごいわ」
他にもいろんな所を採寸しながら、感心しながら言ってきた。
俺は、どういうふうにメジャーの寸法が変わって見えるのか、そっちの方が気になっていた。

「歩多繁(フタバ)さんとは、仲がいいんですね。」
俺は、スタイルの話題だと、ボロがでるかもしれないと思い話題を変える為に、別の話をしてみた。
「そういえば、ここ最近、喧嘩しなくなったわね。何を言ってもブツブツ文句を言って動いてくれなかったのに、1ヶ月前あたりから何だか身体が軽いと言って、私のいうことを聞いてくれるのよ。あんなに太ってるのにね。」
清美さんは、そう言って、笑っていた。たぶん、身体を交換した時期からの現象だと思った。いい方向に向いてよかったと安堵した。

「そういえば、下着以外の採寸をしていましたが・・・」
俺は、自分の事ばかり、気になっていたので、忘れていたのだ。
「気にしないで、採寸も私の趣味なの。他人のスタイルについて、気になると無性に採寸したくなってしかたのよ。それに、下着の場合、着けたときの全体のシルエットを決める重要なものよ。だから全体を知るのも必要なの。付き合わせて、ごめんなさいね」
「そうだったんですか。勉強になります」
「下着が出来上がったら、歩多繁を通して、連絡するわね」
「清美さん。ありがとうございます。あまり、気を使わないで下さい」



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