等価交換儀式の材料である対象者の髪の毛を集めだした。
歩多繁(フタバ)と若葉の髪の毛が、すごく簡単に入手できてしまい、ついでに、清彦の髪の毛まで、手に入れてしまった。
ここまで来ると、コレクター意識が浮上し、他の人の髪の毛も欲しくなった。

そこで、目をつけたのが、若葉の彼氏である誠さんの髪の毛である。多分、使用しないが、今後において、必要になるかもしれないと思ったのだ。

「ねぇ、若葉、彼氏の誠さんを紹介してくれない?」
「いきなり、どうしたの?」
「だって、若葉本人は、よく知ってるのに、彼氏の事、全然知らないし、どういった人か、興味あるもん」
「なんだ。そうだよね。そう言えば、以前に紹介すると言って、そのままだったし、いいよ」
「ありがとう。それで、いつ会える?ねぇ!ねぇ!」
いかにも興味があるように振舞い、早く会わせて欲しいオーラを出した。
「じゃあ、今日も彼氏のアパートに行くから、一緒に行く?」
「行く行く!」
「でも、誠さんを奪ったら、承知しないんだからね」
「大丈夫、大丈夫、だって、あたしは、歩多繁一筋で、愛しているもん」
「熱いねぇww」
「若葉と同じで、お互い様よww」


ここ二日程、歩多繁(フタバ)は凄く怠そうにしながら先に帰ってしまった。昨日から一緒に居たかったのだが頑なに拒否されていた。
たぶん、自分の弱っている所を男として、彼女にあまり見せたくないのだろう。
今日は、若葉との約束で、誠さん所に行くが、帰りに黙って押しかけようとも考えていた。

「俊亜季、可愛いアクセサリー持ってるじゃん」
一緒に若葉の彼氏の所に行く途中で、デイパックのファスナーの取っ手に付いたアクセサリを手にとって見ていた。
「そう?、最近、何だか分からないんだけど、よく貰うのよ。他にもいっぱい持ってるから、あげようか?」
最近になって、男性のから、やたらと小物のアクセサリやストラップを良く貰うのだ。見てて可愛いし、返すのもなんだから、いつも、『見返りは無いよww』と、笑っていると『期待してないからいいよ』の返事なので、気兼ねなく貰ってる。
「私も、沢山持ってるんだ。そうだ、誠さんアパートにいったら、そこで、アクセサリの交換しない?
「集めてるの?」
「俊亜季も知ってるじゃん。私の美女である魅力の特権で、男性からの贈り物だよぉ。俊亜季もそうでしょ」
「美女は余計かもしれないけどww、贈り物をコレクションしてるのかと思って・・」
いけない事を言ったと思い、ごまかした。でも女性は、いろいろとお得な事が多いと感心した。
「俊亜季も失礼ねぇww。あえて収集はしてないよ・・・あっと、ここが彼の住んでるアパートだよ。この2階の一番奥がそうなの」
そう言って、部屋の前まで案内してくれた。


「若葉、ごめん、緊張してきてたわ。彼の部屋のトイレ借りられるかな?」
「多分、大丈夫よww。まことさ~ん!私よ!」
呼び鈴を押しながら、いつもと違う甘えた声で、彼の名前を呼んだ。
「いらっしゃい。入れよ」
少し、小太りだが、精悍な顔つきの彼が出て来た。
これなら若葉が惚れ込む訳だと思って全身をなめるように見ていたが、トイレが気になり、若葉の背中をツンツンしていると・・。
「今日は、友達の俊亜季さんを連れてきたんだけど、いいかな?、それともう一つ、彼女にトイレ貸して!」
「あぁ、いいよ。ここがトイレだからwww」
彼は笑っていたが、気にする事無く荷物をその場に置いて、無言で急いでトイレに向かった。
「間に合った~! どうなることかと思ったぁ」

「トイレ、ありがとうございました・・・・・あっ~、何してるのよ若葉!」
彼にお礼を言って、若葉を見ると、俺のデイパックの中を覗いているので、急いで奪い取ろうと向かった。
「さっきのアクセサリの話で、どんなのがあるかなと思って、先に見てみようかと・・・ねぇ、この小さいクリアバインダは何?」
しまったぁ! それは、集めていた髪の毛を納める為に用意したクリアバインダだった。

「何か、名前が書いてる所に、髪の毛が入っているけど、何?・・・ありゃっ!私の名前もある」
少し、顔面蒼白になりかかった。何かいい訳はないか思案して
「数日前から、皆の髪の毛をコレクションしてるの。皆の髪の毛が、一本一本、色や太さウェーブの違いがあって千差万別なのが面白いと思って始めたの。こんな変な事を誰にも頼めないと思って、皆に黙って拝借しちゃってごめんなさい。それと、切ったり抜いたりした奴じゃなくて、肩に落ちたものを見かけて取ったものだから許して、お願い」
俺は、頼みこむように言った。実際には、切ったり抜いたりしたものだが、悪く思われないように変えて話した。
「へぇ~、面白い趣味を持ってるんだ。いいんじゃない? 後で特徴とか毛質なんかを種類別に纏めてみるの?」
「えっ? うん」思わず頷いてしまった。
「女の子として可愛い趣味とは言えないかもしれないけど、俺の友人なんて、人格を疑うような変な物ばかり集めてるけど、人に迷惑かけてる訳でもないし根暗っぽいものじゃないし、学問なんて、あなたがしてるような事から始まってるんだよ」
皆、勘違いしてるが、何とかごまかせたので、安心した。
「誠さんも協力しようよ」
そう、言い終わらないうちに、プチッと髪の毛を抜いてしまった。
「いて~なぁ。抜くときは、前もって、言ってくれよ」
「言ったわよww・・・はい、俊亜季」
そう言いながら、彼の髪の毛を貰った。

「そう言えば、お互いの紹介は、まだだったよね」
急に、思いだしたように、若葉がきりだした。
「ごめんなさい、あたしが、トイレを借りたり、変なもの暴露しちゃって・・・」
「気にしてないわよね。誠さん」
「可愛い女の子が、うろたえる姿は、いいもんだね。少し萌えたwww」
「何よぉ、私以外に惚れちゃ嫌よ! それに、俊亜季には、ちゃんと彼氏が居るんだから・・・」
「あぁ、俊亜季さんの名前を聞いて、歩多繁(フタバ)が自慢しながら話してるの思いだしたよ。あいつが話しているのは誇張しているもんだと思ってたよ。本当にあいつの言う通りスタイル良くて綺麗だな」
「じゃあ、私もスタイルよくて綺麗?」
「若葉は俺が認めた彼女だ。そう思わなかったら一緒に居ないよ」
「ふたりとも、仲がいいのね。何だか、歩多繁に会いたくなってきたわ」

「あいつから俺と高校が一緒だって聞いたんだけど、こんな綺麗な女性なら目立ってたと思うんだが、記憶がないんだよなぁ」
「綺麗だなんて、そんな・・・。あたし、人見知りするから、たぶん、影が薄かったんだと思います。あたしも誠さんの名前だけは聞いてたんですけど、若葉の彼氏って精悍でカッコイイのね」
「二人とも間接的に知り合いだったんだ。俊亜季ぃ、誠に惚れちゃダメよww」

アクセサリーの交換も終わり、3人と他愛の会話をしているとドアの呼び鈴が鳴った。
「おーい、夜遅くて、すまない。ちょっと、教えてくれないか?」
「こんな夜に、どうした?」
誠さんが、ドアを開けると、本を抱えた、華奢な体つきで、しかも綺麗というか美しいと表現した方がいいブロンドヘアの外国人女性が入ってきた。
「お客さんが、いたんですか?じゃあ出直して来ます」
「いいよ、いつものように、すぐに済むんだろ?」
「はい、そうです。じゃあ、この部分の日本語の表現が、よく分からなくて、教えて欲しんだけど」
玄関先で誠さんが、指し示した本の内容を事細かく説明したいた。その女性は魅力的な低いハスキーな声で、しかも流暢な日本語で話していた。

若葉が、ニコニコしながら、その様子を見ていたので、不思議に感じた。
「ねぇ、若葉ぁ、あの綺麗な女性は、誰?」
俺は若葉の耳元に寄せて、小さな声で聞いた。
「俊亜季も女性に見えたんだww。あの人はオーストラリアからの留学生で、この部屋の隣に住んでるの。しかも、ああ見えても名前がマイケルといって、列記とした男性よww」
「え~!、男性?」
俺は、凄く、びっくりした。
「しかも、結婚してて単身で日本に来てるのよ。奥さんの写真を見せてもったけど、すごく綺麗な人だったわよ」
そう聞かされて、その人を見ると、華奢でロングヘアだが、ガッチリした身体で短い髪だと想像すると、凄いイケメンなのだ。
「髪を短くすれば、女性に間違えられないのに、勿体ないね」
「散髪に行く、お金が惜しいそうよww。そうだ、マイケルに髪の毛を1本貰えるように、頼んでみようか?」
「そんなぁ、悪いわよ」

丁度、誠さんの説明が終わって、マイケルが納得して頷いている所だったので
「マイク~、ちょっといいかなぁ?」
「若葉さん、なんでしょう」
「この娘は、私の友達で俊亜季というんだけど・・・」
「初めまして、マイケルと言います。よろしくです。」
「初めまして、俊亜季と言います。こちらこそ、よろしく、お願いします。」
丁寧に挨拶して来たので、俺も挨拶をした。
「俊亜季の髪の毛の研究資料として、マイクの髪の毛1本をコレクションしたいらしんだけど、いいかなぁ」
「いいですよ。それは、どんな研究ですか?」
そう言いながら、数本抜いて俺に渡してくれた。
「ありがとう。マイケルさん」
「マイクと呼んで下さい」

「いろんな人の髪の毛の性質の違いを研究してるんだって」
若葉が、代わりに、もっともらしい説明をしてくれたので、助かった。
「実に面白い研究ですね。俊亜季さんみたいな、美しい女性の頼みだったら、喜んでしますよ」
俺は美しいと言われて、恥ずかしくなり、真っ赤になりながら「ありがとう」と小さく言った。
「僕は、まだ、調べ物があるので、すみませんが、失礼します。誠さん、いつも、ありがとうございました」
そう言って、出ていった。
思わぬ話で、イケメンの髪の毛を手に入れて、次々回の等価交換儀式の検討で利用出来るかもと、ほくそ笑んだのだった。



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